現代の政治家の役割は、単に政策を立案し、実行することにとどまりません。彼らは国の顔として、国内外に向けてビジュアルメッセージを発信する存在でもあります。そのため、公の場に出る際の身だしなみや印象管理は、政策の説得力を高めるために必要不可欠な要素と言えます。
しかし、日本の政治家を観察していると、身だしなみや自己表現に対する意識が十分とは言えない場面が散見されます。たとえば、記者会見や国際会議といった公式の場で、シワが目立つスーツやサイズの合わない装い、歪んだネクタイ、さらには汚れたメガネをかけた姿が見受けられることがあります。
中には、首相がメガネのメーカーシールをつけたままメディアに登場するという事例もあり、視覚的な印象を軽視しているかのような対応が目立ちます。
もちろん、政策そのものが最も重要であることは言うまでもありません。しかし、政策を効果的に伝えるためには、見た目や表現力の重要性を軽視することはできません。
ここで改めて注目したいのが、オーストリアのセバスティアン・クルツ元首相です。彼は31歳という若さで首相に就任し、その洗練された印象作りによって国内外で注目を集めました。彼の印象作りは徹底しており、記者会見やスピーチではフィット感のあるスーツと清潔感のある髪型を心がけていました。
このような姿勢は、彼のメッセージに信頼感と説得力を与え、若手リーダーとしての地位を確立する重要な要因となりました。
クルツ元首相の動画を見ると、全体の佇まいが聴衆に強い印象を与えていることが分かります。たとえば、車から降りた際に、さっとスーツのジャケットのボタンをさりげなく閉める仕草や、要人と会う際にジャケット×シャツ×ネクタイから成る上半身のV字ゾーンが整っているかを気にする姿勢などが挙げられます。
また、同じ動画に登場するEU大統領のシャルル・ミシェル氏も、印象管理の重要性を体現する政治家の一人です。2024年現在、現役で活躍するミシェル氏は、公式の場で常に端正で洗練された姿を維持し、その立ち振る舞いによって政策のメッセージを効果的に伝えています。こうした姿勢は、政治家としての存在感を強調し、国際社会における信頼を高める重要な要素となっています。
一方で、クルツ元首相のキャリアはスキャンダルによって影を落としました。政府資金を用いて自身に有利な世論調査を操作したとされる疑惑や、議会調査委員会での虚偽証言に関する起訴は、彼の評価に大きな傷を残しました。むしろ、外見の優れた印象がこれらの問題をより際立たせ、誠実さや信頼性への疑念を深める結果となったのです。この事例は、見た目の重要性を認識しつつも、政治家にとって最も重要なのは、その行動であることを再確認させます。
いま世界では30代、40代の若手リーダーが活躍し、政治の新たな可能性を切り拓いています。日本でも次世代を担う政治家たちには、身だしなみや印象管理を磨き上げることで、国民に信頼されるだけでなく、国際社会で堂々とその存在感を示すリーダーになってほしいと願っています。